人ごみの中、僕は流れに逆らって歩道橋の前に来た。
そう、今日は夏祭りである。
今回は、僕が女らしい格好をして、祭りにくことになってしまった。太子から言うと「お前は女なんだから浴衣きてくるでおまっ」と。
「はぁ」
ため息が出る。僕の持っている浴衣といれば姉の赤色の桜模様のものしか持っていない。
通り過ぎていく人たちの中。僕は、一人立ち止まって流れていくカップルたちを見ていた。
僕たちも、いつかあんな風に
イチャイチャするように、なってしまうのだろうか・・・・・・
したい。
けど、する勇気がないし。第一、プライドが許さない。
僕は今まで、男として生きてきた。その所為で、女という自覚は”0”。
男子にくっつくなんて、超あり得ないことだった。
「太子、遅いな・・・・」
ひゅうっ、と風が通り過ぎる。茶色の髪を、強く揺らした。
そういえば、鬼男も来るって言っていた気がする。閻魔先輩と一緒に行くとかなんやら。
鬼男は閻魔先輩の事が、好きで・・・閻魔先輩は、容赦なく鬼男に突っかかる。僕は、何回羨ましい、と感じたのだろうか。
「はぁ・・・」
また、ため息が出る。
「妹子」
「っ・・・太子!」
「ごめんごめん!遅くなったな」
「本当ですよ・・・なんふ・・・」
太子の服は、渋い青色の浴衣に暗い赤色の帯。髪の毛は、いつも女物の髪留めで留めているくせに今日は、黒いゴムで。
まるで、そこらへんにいるしっかりした男の人みたいに。カッコよくって・・・・。
「あ、あ、」
「ん?あぁ・・・、今日?浴衣着てきちゃった★どう、似合う?」
「・・・・よ、」
「?」
ヤバい。カッコイイっ・・・・
駄目駄目っ!!
ぶんぶん、と頭を振った。太子は、不思議そうな顔でこっちを見ている。
本当にどうしよう、太子の顔が、真面目に見れない。
「よくないです。超」
「え、えぇっ。ひどいでおまっ」
なんて。考えてないけど。
「まぁ、いいや。いこっか、妹子」
「はい」
夏祭りに出かけた。
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