ガタンッ
「いって」
「円堂くん、大丈夫?」
夜、真っ暗やみの中、俺と円堂君は宿を抜け出した。
≪天体観測≫
『ヒロトって、お日さま園から来たんだろ?』
『うん』
『そこで、何して遊んでたんだ?』
食堂の会話。
たまたま隣どうしになった俺たちは、円堂君の昔話に花を咲かせていた。
すると、円堂君はいきなり俺の昔の話について聞いてきたんだ。
『うーん、別に何してたっていう、遊びはしてないけど・・・』
『けど?』
『あ、夜にみんなで天体観測っていうか・・・そう、望遠鏡で星を見たよ』
『望遠鏡!?いいなぁ、俺も一回使ってみたいなぁ』
そう、話していた日中。
俺は円堂君は都会の子だから、きっとただ単に興味を持っただけなのかと思っていた。
のに、彼は・・・・
「ヒロト!」
夜に、いきなり俺を呼びに来た。
「あのさ、俺、望遠鏡の使いからわかんないから。一緒に、見ようと思って!」
円堂君は厚い上着に、片手には懐中電灯。
もう、外に出る気満々だ。俺は、ちょっと待ってて、と告げるとすぐに上着を着て、部屋の外に出た。
「おまたせ」
「いいって!さぁ、行こうぜ」
うきうき、わくわく、という歩き方で進んでいく彼は、まるで新しいおもちゃを貰った子供のようだった。
・・・・・あ、まだまだ子供、かぁ。
こつ、こつと歩いて行くと、暗闇に飲み込まれるような感じがした。
ふいに怖くなって、円堂君の上着を握る。
「どうした?」
「あ、いや・・・ちょっと、転びそうになって・・・」
「そうか?逸れると怖いし、そのままつかまってろよ」
「・・・・・うん」
どんどん進んでいくと、本当に二人きりになった。
光は、円堂君の持つ懐中電灯だけ。俺は、ふと、気付いた。
「ねぇ、円堂君。このこと、監督には言った?」
「言ってない・・・けど?」
やっぱりだ。
これは、やばい。
今の時間は11時50分。普通に14歳の男子二人で外に出たら、怒られるにきまっている。
このことがばれたら、即日本に帰らされるんじゃ・・・
「大丈夫、かな?」
「・・・大丈夫の何も、監督なんかに伝えたら、ヒロトと二人っきりになれないじゃん」
「え」
今・・・
なんて言った?
俺は、握っている円堂君の上着を離した。
今の・・・って、聞き間違い?だって、今・・・
「ヒロト?」
「・・・・・円堂、君は・・・」
「うん?」
「・・・・・・・・いや、なんでもない」
聞いたら、今の関係が崩れてしまう気がした。
たぶん、次もあるw
[2回]
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